オザワアキヒコ
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「創発的進化論」は、進化の過程で新しい性質や能力が、それ以前の要素の単純な組み合わせからは予測できない形で出現するという考え方を指します。これは、複雑系科学の概念である「創発」を進化論に適用したものです。

ロイド・モーガンは、19世紀のイギリスの心理学者であり、動物行動学者です。彼は、「モーガンの公準」として知られる、動物の行動を解釈する際の節約の原則を提唱しました。「低次の心的な能力によって説明可能なことは、高次の心的な能力によって解釈してはならない」というこの原則は、動物の行動を解釈する際に、不必要な擬人化を避けるための指針となりました。

モーガンの存在論は、進化における創発性を重視するものでした。彼は、進化の過程で、物質的な基盤から精神的な能力が出現すると考えました。これは、還元主義的な立場とは対照的な、全体論的な視点です。

創発的進化論は、進化を、単純な要素から複雑なシステムへの段階的な発展として捉えます。それぞれの段階で、新しい性質や能力が創発し、それによって生物は新たな環境に適応し、進化していくことができます。

ロイド・モーガンの存在論は、現代の進化論においても重要な意味を持ちます。特に、意識や知性といった高次の精神機能の進化を理解する上で、創発的な視点は不可欠です。

創発的進化論のポイント
・進化は、単純な要素から複雑なシステムへの段階的な発展
・各段階で、新しい性質や能力が創発
・創発によって、生物は新たな環境に適応し、進化
・意識や知性といった高次の精神機能も、創発の産物

ロイド・モーガンの貢献
・動物行動学の先駆者
・モーガンの公準:動物行動解釈における節約の原則
・進化における創発性を重視
・現代の進化論、特に意識の進化の研究に影響

参考文献
・Morgan, C. Lloyd. (1894). An Introduction to Comparative Psychology. London: Walter Scott.

補足
創発的進化論は、まだ発展途上の理論であり、多くの課題が残されています。例えば、創発がどのようにして起こるのか、そのメカニズムはまだ解明されていません。しかし、複雑系科学の発展と相まって、今後の進化論研究において重要な役割を果たしていくことが期待されます。

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