オザワアキヒコ
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このテーマは、進化論における動物と人間の心の連続性についての議論、特にジョージ・ロマネスとロイド・モーガンの対照的な見解に焦点を当てています。

1. ジョージ・ロマネスと「心の連続性」
ダーウィンの進化論に影響を受けたロマネスは、動物の行動を観察し、人間と動物の間に心の連続性があると主張しました。彼は、動物にも人間と同じような感情、思考、意識があると信じ、動物の行動を人間の行動と同様に解釈しました。これは、動物の心を擬人化し、人間の心に近づける考え方でした。

2. ロイド・モーガンと「跳躍」の導入
ロマネスの考え方に異議を唱えたのがロイド・モーガンです。彼は、動物の行動を解釈する際に、より単純な説明を優先すべきだと主張しました。「モーガンの公準」として知られるこの原則は、「動物の行動は、可能な限り低いレベルの心的能力で説明されるべきである」と述べています。
モーガンは、ロマネスのように動物の行動を人間の心理に投影することを批判し、動物の行動をより客観的に観察し、単純なメカニズムで説明しようとしました。これは、動物と人間の心の間に「跳躍」を導入するものでした。つまり、人間の心は動物の心から連続的に進化したものではなく、ある時点で質的な飛躍が生じたと考えたのです。

3. 「跳躍」の意味するもの
モーガンが導入した「跳躍」は、進化論における心の連続性に対する重要な修正でした。これは、人間の心を特別なものであると捉え、動物との間に明確な境界線を引くことを意味します。
しかし、この「跳躍」が具体的にどのようなものであったのか、どのようなメカニズムで生じたのかは、依然として議論の的となっています。現代の認知科学や神経科学では、動物と人間の心の違いを、脳の構造や機能の違いから説明しようと試みています。

4. 結論
ロマネスからモーガンへの移行は、進化論における心の連続性に対する考え方の変化を示しています。ロマネスの連続的な見方から、モーガンの跳躍的な見方への変化は、動物と人間の心の関係をより複雑に捉えるようになったことを示しています。
この議論は、現代の動物認知研究にも影響を与えており、動物の心と人間の心の類似点と相違点について、より深い理解を促しています。

補足
・モーガンの公準は、動物の行動を解釈する際の重要な原則ですが、近年では、動物の認知能力を過小評価しているという批判もあります。
・現代の研究では、動物、特に霊長類や鳥類など、高度な認知能力を持つ動物がいることが明らかになっており、動物と人間の心の連続性について、新たな視点が提供されています。

このテーマについてさらに深く理解するためには、ロマネスの著書『Animal Intelligence』やモーガンの著書『An Introduction to Comparative Psychology』などを参照することをお勧めします。

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