進化論にまつわる一元論
ロマネスの方法と存在論
RE-CEREBRO:歴史:進化論
進化論における一元論は、心と体、物質と精神、あるいは有機物と無機物を、本質的に同一のものである、あるいは単一の根本的な実体から派生したものであると見なす立場です。これは、心と体を別々の実体と見なす二元論とは対照的です。
ジョージ・ジョン・ロマネス(George John Romanes, 1848-1894)は、ダーウィンの進化論を支持し、動物の行動と心の進化を研究したイギリスの生物学者です。彼は、心も進化の産物であり、物質的な基盤を持つと考えていました。これが、ロマネスの一元論的な立場です。
ロマネスは、著書『Mental Evolution in Animals』(1883)の中で、動物の心の進化を段階的に説明し、人間もその延長線上にあると主張しました。彼は、意識は神経系の複雑化に伴って出現したと考え、人間の精神的な能力も、進化の過程で自然選択によって形成されたとしました。
ロマネスの一元論は、方法論的な一元論と存在論的な一元論の二つに分けられます。
方法論的な一元論とは、科学的な研究においては、心的な現象も物質的な現象と同じように、自然法則に従って説明されるべきであるという立場です。ロマネスは、動物の行動を研究する際には、心的な原因ではなく、神経系や生理的なメカニズムといった物質的な原因を探求するべきだと主張しました。
存在論的な一元論とは、心と体は本質的に同じものであり、最終的には物質に還元されるという立場です。ロマネスは、心は脳の活動の産物であり、脳の構造や機能を理解することで、心の働きも理解できると考えていました。
ロマネスの一元論は、当時の心理学や哲学に大きな影響を与えましたが、同時に多くの批判も招きました。特に、意識や自由意志といった問題を、物質的な過程に還元することには、強い抵抗がありました。
しかし、ロマネスの心も進化の産物であるという考え方は、現代の進化心理学や神経科学にも受け継がれています。彼の研究は、心と体の関係、そして人間の心の起源を探求する上で、重要な貢献をしています。
補足
・ロマネスは、動物の行動を解釈する際に、擬人化に陥る危険性を指摘しました。彼は、動物の行動を人間の行動と安易に比較するのではなく、動物自身の視点から理解しようと努めました。
・ロマネスは、比較心理学の創始者の一人であり、動物の知能や感情を客観的に研究するための方法を開発しました。彼の研究は、動物の行動学の発展にも大きく貢献しました。
参考文献
Romanes, G. J. (1883). Mental evolution in animals. Kegan Paul, Trench.